【水墨画の技法について~三墨法(調墨)】
樋口鳳香の描く墨美神(スミビシン)は、様々な水墨画の技法で表現します。 今日は水墨画の基本中である「三墨法(調墨)」の話を少し。 筆と墨で表現する水墨画には「にじみ」「かすれ」など ほかの画材では効果的に表現できない特徴があります。 水墨画の基本とも言える美しいグラデーション表現に「三墨法(調墨)」という技法があり、 これは筆一本の中に水〜薄墨〜中墨〜濃墨のグラデーションを作って、 側筆、つまり筆の腹で書く、というものです。 鳳香の墨美神(スミビシン)の肌は、この技法で一気に描きます。 墨は最初に書いた線がどんなに重ねても残るため 付け足しながら書いたり、ちょっとずつ書いたりすると どうしても筆跡が影のように残って消えないのです。 なので、連筆(筆が数本連なったもの)を使って調墨し、一筆で肌の陰影をつけてしまいます。 すると美しい薄墨のグラデーションによって肌の透明感が出る、というわけです。
画像は現代水墨画協会理事長である根岸嘉一朗先生の『墨の美に学ぶ水墨画』(日貿出版社) とてもわかりやすい水墨画入門書だと思います。