【空白の美学~水墨画から聞こえてくる音や景色】
「水墨画には破墨と呼ばれるものがある。 破墨とは荒くすばやい筆法、すなわち精緻な描写からの逸脱を意味する。 リアルな描写を逃れた粗の筆致、それゆえに、見る側がその未発の景観を補完し、イメージのほとばしりを加速させる。 そのような仕組みを言う。同じ仕組みが松林図には備わっている。」 (原研哉「空白の意味」より) 武士や僧侶にその高い精神性をもって、受け継がれてきた水墨画。 そこに見られる空白の美学は日本独自のものがあり、すべてを精緻に表現しつくさないことによって、画面にないものを想起させる。 それが精神性につながるのだと思います。 西洋の方はこの無音の言葉に『禅~ZEN』を感じるのかもしれませんね。 今の時代、日本古来の多くを語らない美学はどこかへ消えて行こうとしている気がしますが、 今一度、日本人の魂に宿り続けてきたはずの『空白の美』を取り戻してみたいものです。 さて。 現代水墨画協会の春の同人展である『現水春季展』が開催されています。 水墨画の現代的表現を創生する「現水展」は日本でトップクラスのクオリティの高い画展です。 主催の「現代水墨画協会」は全国規模の水墨画団体で、今年57年目を迎える歴史ある会です。 10月の東京都美術館での本展に比較すると小品になりますが、手応えのある展示になっております。 ぜひ、空白から聞こえてくる音や景色に耳をすませてみてください。
※画像は根岸嘉一朗(現代水墨画協会理事長)の作品(2018墨・無限展より) 春の同人展【2018現水春季展】 〈入場無料〉 会期:4/17(火)~4/22(日)10:00~18:00(21日22日は17時閉館) 会場:北とぴあB1展示ホール (王子駅直結)