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【100号を描く~水墨画の墨いろについて】


しばらく大きな作品と向き合っていました。


10月に東京都美術館で開催される『現水展』の作品です。


今回は私の所属する『現代水墨画協会』が


創立60年となる『第60回記念展』なので、ちょっと力が入りました。





100号サイズの墨美神®︎を創作するにあたっての手順ですが


私は、まずF100号の比率を6号ほどに縮尺して下絵を起こします。


そのサイズで構図、技法など合わせて、下絵の確認をします。


小下図(エスキース)と言っても水墨画なので、この時点でかなり本画に近いものです。


画廊で展示しても問題ないほど、ひとつの作品として完成しています。


今回は、まずその完成度の高いエスキースを3枚描きました。





その中の一番納得のいく1枚を元に100号サイズに下絵を起こし直し、


本画を描いていきます。





6号(幅30cm)と100号(幅130cm)、サイズがかなり違うので、本画の下絵で若干の構図の調整をします。


墨美神が6号の比率ほど大きくなりすぎないように気をつけたり、


その他のモチーフたちが細かくなりすぎないよう、100号に見合った大きさにするなど、いろいろあります。





100号実寸の下絵ができたら、いよいよ墨を入れていきます。


いつもの、墨と水だけの表現であれば100号であっても、2~3日ほどで仕上げます。


水墨画の場合、墨色の変化や、紙に滲み出す膠の化学的変化もありますので、


本来なら日を跨がずに、集中力を高めて紙が濡れている状態で完成まで導くのがベストです。





墨色は重ねるほどに汚れていきます。


篠田桃紅さんが言うように最初に入れた墨の線は、最後まで消えません。


いくら隠そうと思って筆を重ねても、汚れるだけです。


筆の中に作った調墨(グラデーション)を、


迷いなく一気呵成に和紙の繊維に絡めていくことが大切なのです。





しかし今回はマチエールを含め新しい技法をいくつか取り入れたので、


絵肌作りに時間をかけました。


生の和紙を活かした点は水墨画ならではの技法ですが、日本画よりの水墨画になりました。





100号という大きい作品を描くにあたって、


美しい墨の滲みを表現するために、私は刷毛でなく連筆を多用します。


刷毛よりも水分の含みがたっぷりになるので、長い時間枯れずに描けるからです。


墨美神は渇筆の枯れた表現より、筆に水をたっぷり含ませた潤いのある表現が合っています。










というわけで、今回主に使ったのが、この画像にある20連筆、と9連筆でした。


どんな風に使うかはパフォーマンス動画をご覧いただけたらなんとなくご理解いただけるかなと思います。




Youtube動画:墨美麗組ライブペイント・ダイジェスト版





さて。大作が手離れしたので気持ちも新たに次に進めます。


また時間に追いつかれそうです。頑張らないと!








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